古都 茶会記

気軽に楽しめる茶道と京の徒然

コロナ影響下 京都のインバウンド観光の現状と生き残り対策&今後

2020年3月24日、オリンピック1年延期となり、
中止よりは、少し希望が見えた観光業界ですが、
既に6月の予約までも、キャンセルが出てきており、
影響はまだまだ続くものと思われます。

お客様が「半減」などとニュースがありますが、
外国人観光客が主なお客様であったお店にとっては、半減どころではなく、ほぼ「ゼロ」です。
外国人観光客を案内する、通訳案内士さんも同様だと思います。

インバウンドってもう終わり?ただのバブル?
そう思っている人もいると思いますが、
冷静に現状と対策を考えてみましょう。

 

中国人団体旅行者の渡航禁止から始まる

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中国人観光客

注:写真は過去のものです。

 

中国の武漢でコロナウイルスがアウトブレイクし、
2020年1月27日から中国人団体旅行者が、
中国共産党により渡航禁止とされました。

これにより、最初は春節の中国人団体がキャンセル
普段は、中国人観光客の比率が少ない弊社でさえも、
春節の時期だったので、
200名以上のキャンセルが出ました。

 

お客様がほぼ中国人団体だったホテル等には、
この時点で大打撃となり、
破たんに追い込まれた、きものレンタル店も出てきました。
京都以外でも、老舗旅館が廃業が報じれれましたね。


しかし、この段階では、欧米圏のお客様のキャンセルはそれほど多くなく、
被害は限定的だったと思います。

京都のインバウンド関連の繁忙期は、
なんといっても、3月末から4月の桜シーズンなので。



 

 

欧米圏にも影響が出た3月

ところが、3月に入っても、コロナウイルスの影響は収まらず、
2月の春節の減益をカバーしてくれる期待だった、
春の欧米人の訪日も、次々とキャンセルになりました。

3月初めまでに、封じ込めの傾向が出て来ていたら、
影響は限定的だったと思いますが、

今思えば、
もう、市中に広がった時点で、封じ込めは難しかったのでしょう。

 

もう細かくどこの国とは書きませんが、
欧米の主要各国が、渡航禁止、都市の封鎖をしたことから、
3月18日~21日までの間に、
ほぼすべての春の予約がキャンセルされました。

 

3月18日頃までは、コロナウイルスの影響があっても、
渡航をすると決めていた外国人観光客も、
政府によって強制的に、訪日できなくなったのです。


ですので、お客さま半減ではなく、「ほぼゼロ」です。

毎日、メールにキャンセルメールの嵐で、
対応が大変でした。

 

 

 

観光業の非常事態への事前対策

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コロナウイルスの問題により、
観光業が危機になっていますが、これは、今に始まったことではありません。
これまでも、リーマンショックや、東日本大震災の年は、同じような状況が起こってきました。

今回の程度は、リーマンショックの比ではないとも、言われていますが。

国際情勢、自然災害の影響を受けやすいため、乗り越える対策は、
経営状態が良い時から、準備しておく方が良いと思います。

 

1、「中国のみ」等、1国に絞らない集客

 中国武漢から始まったコロナウイルスもそうでしたが、

少し前に、韓国との国際情勢が悪化したことにより、韓国人観光客が激減しています。

弊社は、なぜか、通常時から韓国人の方は、ほとんど来られたことがないので、

影響がありませんでしたが・・・。

訪日外国人観光客の50%以上が中華圏と韓国からですが、

だからといって、中華圏に絞った集客をするのは、
非常時のリスクが高いでしょう。

 

 

 

2、日本人観光客向けのサービスも行う

 観光客の中には、当たり前ですが、
日本人と外国人がいます。

事業をされている方の中には、京都では、
お客様は、外国人オンリーだというところもあると思います。

弊社も、日本人を制限しているわけでもなく、
国籍問わずオープンにしているのですが、
自然と、日本人からのニーズが少ないため、
外国人観光客が中心です。

しかし、できれば、日本人観光客向けのサービスだったり、
継続的な日本人のクライアントさんだったりを
普段から作っていくべきだと思います。

 

 

 

3、関連商品、サービスのオンライン販売を行う


コロナウイルスの影響で、世界では多くの方が家に隔離状態や、
外出自粛をしています。
その影響で、オンライン動画再生数が伸びたり、ネット通販の売上が伸びたり
といった影響があります。
多くの店舗事業が売上減益の中、逆に売り上げが上がっている事業もあるのです。


店舗事業が主要でも、その中のサービスの提供をオンライン化したり、
商品を1つでも、オンライン販売しておくことが、
今後の対策として、考えられます。

例えば、講師業の人は、オンラインで教える動画コンテンツを作っておいたり、
飲食業の人は、オンラインで販売できる商品をひとつ持っておく等。

 

 

 

 

 4、緊急時予算を会社に備蓄

今回、コロナウイルスは、数か月の間に、日本の観光の未来を瞬く間に変えてしまいました。
1月末までは、2020年夏はオリンピック開催が決定されており、
多くの訪日外国人観光客が来る予測を誰もがしていたと思います。
しかし、一瞬にして、未来は変わりました。

このような急変は、地震や台風が起こった場合にも
再度発生する可能性はあります。

日本は、災害の多い国なので、
私たちは、普段から備蓄や、資産運用を考えておくべきだと
痛感させられました。


 

5、訪日外国人や観光と関係ないビジネスも経営・副業する

もう、ここまで来たら、最後の手段です。
しかし、上記4番や、5番が、国境封鎖された今、重要になってきています。
弊社は、開業して4年半ですが、当初から5番まですべて、取り組んできました。

本業の観光と、まったく関係ないビジネスを始めたときは、
「なぜ?どうして?」
と周りの人から疑問に思われましたが、今なら、みんな「やっててよかったね」と言います。

まさか、ここまでの事態が2020年初めに発生するとは、
私も予想外でしたが、対策は普段から考えておいた方が良いと実感したので、
この記事をシェアしたいと思いました。

ただ、今から対策が間に合わないという方は、
日本政策金融公庫が融資をしているので、これを利用する方法もあります。

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html

 

 

 

 

 

インバウンド、訪日外国人観光客の今後

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ここに来て、外国人向けの観光事業者を応援する報道もある一方、
ここぞとばかりに、批判的なSNSの発信も見かけます。

主に、中国人観光客のマナーの悪さや、オーバーツーリズムについてです。
「それみたことか。外国人を相手にするから悪いんだ」
そんな感情が垣間見えます。

 

確かに、観光を中国1国ターゲットにするのは、
先に書いたように、リスク管理の観点からしても、違うと私も思っています。

 

日本文化を外国人向けに安売りするのではなく、

外国人に正確に分かりやすく、楽しく伝えたいと思って活動してきました。

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2016年7月。

たとえ、ビジネス的に売りやすいとしても、
「外国人が喜ぶから、分からないから」といって、
適当なことをするのはポリシーに反すると思い、
真面目に伝統を守ってきました。

外国人観光客向けだからと、
伝統を適当に伝えていたり、
最近では、習ったこともないのに、YouTubeを見てマネごとを
外国人に披露している事業主もいると噂を耳にはさんでいたので、
驚きと怒りがありました。

インバウンド批判に賛同する面があるとすれば、

従来の地域の伝統文化が壊されていくのは、
耐えられないなということ。

しかし、一方で、
昔の京都、日本に戻るのが解決策か?といえば、
決してそうではないと思います。

 

その理由は・・・

茶道や華道の支部に行くと、

若い人って少ないです。
圧倒的に60代以上の奥様が多い!
30年前は、振袖がずらっと並んでいた新師範式の写真と見比べて、新人の人数も激減です。

京都では、今、
外国人観光客向けに体験を提供して生計を立て、伝統文化を自ら継続している若者がいます。
女性だけでなく、若い男性もです。

趣味としてだけなら、
続けたくても、続けられない伝統文化を
若者が続けるチャンスとモチベーションを
インバウンドが与えてくれている。

この流れは、素晴らしいと思っています。

一色単にインバウンドは悪と、
片付けてほしくないと思います。

何が本物で、何が違うのかなんて、
日本人も、分からない人もいますし、
外国人観光客の方が分かってる場合もあります。
お店側として、日本人の方が、中国人より
マナーや態度が非常に悪いと感じたこともあります

そして、インバウンドの恩恵は、
事業主だけではなく、
税金がまわりまわって、日本の財政にもなっています。

「歴史は繰り返す」とよく言われますが、

繰り返すならば、
これまでも、リーマンショックや東日本大震災後、
訪日外国人数は回復・増加してきました。

観光業には、自然災害や国際情勢に弱いというリスクは
前々からありますが、
対策をしながら、頑張っていきましょう。

お客様が、強制的に来ない今は、
家族と過ごす時間にあてたり、
今後の新しいビジネスをオンラインで相談したり、自分で考えたり。
コンテンツを作ったり。
できることは、たくさんあります。

 

次のチャンスに、備えましょう。