外国人のお客様から、「お茶会の目的は何ですか?」「どんな場面でお茶会をしますか?」というような質問をされることがあります。
日本人のお客様からはあまりされることのない、はっとさせられるような、質問です。意外と答えるのが難しいなと思います。
どんな場面でお茶会をしますか。
外国のお客様は、日本人はみんなお点前が当たり前にできて、家族でしているものだと思っている人もよくいらっしゃいます。
結婚式や、誕生日など、ファミリーイベントの節目に行うのですか?ともよく聞かれます。
もちろん、結婚式に呈茶席を設けることも、お誕生日茶会を開くことも可能です。お茶会は、いつでも、どんな場面でも行うことはできます。
しかし、あまり結婚式に呈茶をしたり、お誕生日茶会を行う日本の家族はいないし、一般的ではないよとはお答えしています。
お茶会をする目的は何ですか。
茶道をなぜ習い始めたのか、なぜ何十年も継続して習っているのか、それは人それぞれに理由があるので、一概に何とは言えないと思います。
30年ほど前は、「花嫁修業」の一環として初めた、という女性もとても多いことでしょう。
また、多忙な仕事や日常生活から離れ、心を落ち着ける時間としてお稽古をする人もいらっしゃるでしょう。忙しい現代人は、そういう理由で始めるという方は多いかもしれません。
しかし、色んなきっかけでお稽古を初められた方も、お茶会を通して、「その瞬間の季節を味わう」「お道具や人と一期一会の出会いをする」ということを楽しまれているのではないでしょうか。
日本人の心に生き続ける 四季を感じる心
最近は、オフィスビルやマンションでの生活だと、あまり日常で季節感を感じられないという方もいらっしゃるかもしれません。
日本人のお客様でも、お茶会で季節感が関係あることをあまり知らない方も多くいらっしゃいますし、茶道=「作法を学ぶこと」というイメージが第一に強く、その他のことはあまり知られていない場合が多いように思います。
さらに、外国人のお客様であれば、「桜の茶会」と聞いて、「何それ?伝統的な茶道ではなくて、何か新しい、あなたがクリエイトしたもの?だったらあまり興味ないな。」みたいに質問されたこともあります。
観光客の方向けの英語茶道体験で、季節感まで意識してお伝えできている場所は、ほとんどないので、茶道=日本の作法と理解されている外国人の方は多いかもしれません。
しかし、茶道を長年習っていて、月釜などに参加されている方は、お道具を拝見して、季節を味わうことも非常に楽しみにされているのではないでしょうか。
これは、単に「季節限定感」という集客のための要素ではなく、古代から日本人の心にある文化です。
枕草子、源氏物語など、季節を味わう物語だと言っても過言ではありません。
平安時代には、女性と深い関係になる前は、男性はお顔を拝見することもできなかったため、きもの襲の色目を見て、「時にあひたるもの」を着ているか?がアプローチをかけるかどうかの判断基準だったようです。
そのくらい、季節感は王朝人にとって大切なものだったのですね。
参考:吉岡幸雄著 「源氏物語の色辞典」
たった45分間の体験でお伝えできることは限られていますが、茶道を通して、少しでも多くの方に日本の文化、心をお伝えできればと思っています。