古都 茶会記

気軽に楽しめる茶道と京の徒然

季節によって変わる茶室のしつらえ 風炉と炉

湯を沸かす釜は、お茶室のどこにあるでしょうか。

お茶室を「テレビで見たことある!」という人の中には、畳の上に釜を据えているイメージを持っている人もいれば、畳に炉を切った中にあるというイメージを持っている人もいます。

どちらのイメージも正解です。

では、畳の上か畳の中かで何が違うかというと、畳の上は「風炉」といい、薫風香る5月~10月までのしつらえ。畳の中は「炉」といい、寒さを感じる11月から4月までのしつらえです。

村田珠光が初めて炉をきり、千利休が侘茶を完成する以前は、季節問わず風炉を使っていました。現在でも、炉をきっていないお部屋では、年中風炉でお点前をすることもできます。 しかし、炉があれば、より季節を感じることができます。

 

風炉

 

 

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4月後半から5月に炉を閉じ、風炉に切り替わります。花入は籠花入が似合うようになり、花は槿や矢筈すすきの葉をよく入れます。お香合は木地、中には香木を入れます。

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5月は、杜若や、菖蒲や兜等、端午の節句にちなんだお道具が楽しみ、6月は蛍や紫陽花など。夏はお薄に平茶碗も使います。普通より浅いお茶碗で、涼しげに見えますし、お茶が冷ましやすいです。

8月、お盆を過ぎると、とんぼやすすき等、秋めいたお道具やお菓子も登場します。

9月になると、花は穂のついたすすきが似合う季節になります。

 

中置

 

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10月だけの特殊な姿です。「風炉」の名残りではありますが、風炉の位置は畳の真ん中、水指は左側で、細長い形のものを使います。茶道体験古都では、織部の細水指を使っています。

このように、寒くなるにつれ、釜、つまり火のある位置が、お客様の方にだんだんと近くなっていきます。

中置きになると、風炉ももうすぐ終わりで、来月からはいよいよ炉の季節になるな、と季節の移り変わりを感じます。

中置きは、華やかなものよりも、侘びた趣向のお道具が使われることが多いです。

 

 

 

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11月からは炉になります。炉開きは、新しい季節の始まりで、お正月のような晴れがましい節目です。炉に炉縁を入れ、釜や柄杓の合は、風炉より大きめになります。備前や伊賀、信楽などの花入に椿をよく入れます。

お香合は、風炉では木地に香木だったのが、やきものに練香と変化します。

11月は紅葉や銀杏、12月は「無事是貴人」や「歳月不待人」等、年の瀬を感じるお軸がよく似合います。新年は、干支のお道具や松、宝尽し等の晴れがましいお道具。寒さが増す季節は、筒茶碗で温かいお茶をいただくこともあります。筒茶碗は、夏の平茶碗とは逆に、深い茶碗で熱が冷めにくいものです。

2月は節分、3月は雛祭りにちなんだ雪洞、菱餅、立ち雛などのお道具を目にします。4月は桜尽くしのお茶会もありますね。

茶室は一度体験して、又はテレビで見て知っていると思っている人も、違う季節に足を運んでみると、きっとまた違った雰囲気を楽しめますよ。